手軽でヘルシーなおやつとして話題のドライフルーツ。しかし、腎臓の機能が低下している患者さんや透析患者さんは、食べ過ぎに注意しなければならないことをご存知でしょうか?
その理由はドライフルーツに含まれるカリウム。カリウムは高血圧予防にも効果的とされているミネラルですが、腎臓の機能が低下している人はカリウムをうまく排出できず、過剰になると、最悪の場合命に危険が及ぶこともあるのです。
そこで今回は「なぜ腎機能が低下しているとカリウムを摂り過ぎてはいけないのか」について考えながら、腎機能が低下している患者さんでも食べても良いドライフルーツの量を考えていきましょう。
カリウム豊富なドライフルーツ:健康維持にぴったりです
カリウムを豊富に含むドライフルーツは、血圧の健康維持や心臓疾患のリスク低減に効果的と言われいます。特に高血圧を気にする方や、心臓の健康をサポートしたい方におすすめです。バナナ、プルーン、レーズン、アプリコットなど、カリウム含有量が高いドライフルーツの摂取は、ナトリウム排出を促し、健康な生活への一歩となります。
カリウムを摂り過ぎるとどうなる?
カリウムの働き
カリウムとは、細胞の浸透圧を維持したり、水分を保持したりするのに重要な役割を果たしているミネラルです。血液中のカリウムの量は、腎臓の働きによって一定の濃度(3.6~5.0mEq/L)に保たれています。
さらにカリウムには、高血圧の要因とされるナトリウムの再吸収を抑え、尿中への排泄を促進する働きがあり、血圧を下げるのにも効果的です。そのため健康な人であれば、高血圧予防のためにもカリウムを積極的に摂るべきものとされています。
カリウムの摂り過ぎによる影響
健康な人であれば、カリウムを多少摂り過ぎても腎臓の働きによって尿とともに排出されるため、摂り過ぎの心配はありません。しかし、腎臓の機能が低下している人は、摂り過ぎに注意する必要があります。
このような人がカリウムを摂り過ぎると、腎臓からうまく排出することができず、血液中のカリウム濃度が高まる、高カリウム血症と言われる状態となります。
高カリウム血症になると、筋肉の収縮を調節できず、四肢のしびれや不整脈などの症状が現れ、重篤な場合は心停止を起こすこともあります。
誰がどの程度カリウム制限すべきか
腎機能の分類とカリウム制限
腎機能が低下していると一言にいっても、その中に分類があります。腎臓病の分類は主に、腎臓がどのくらいの老廃物を尿へ排泄できるかを示すeGFR(推算糸球体濾過量)や透析の有無などで決められ、カリウム制限の程度はその分類によって変わります。
腎臓の機能 | ステージ | カリウム制限(mg/日) |
eGFR≧90 | ステージ1 | 制限なし |
eGFR60~89 | ステージ2 | 制限なし |
eGFR45~59 | ステージ3a | 制限なし |
eGFR30~44 | ステージ3b | ≦2,000 |
eGFR30~44 | ステージ3b | ≦2,000 |
eGFR15~29 | ステージ4 | ≦1,500 |
eGFR<15 | ステージ5 | ≦1,500 |
透析導入:血液透析(週3) | ステージ5D | ≦2,000 |
透析導入:腹膜透析 | ステージ5D | 制限なし(高カリウム血症がない場合) |
腎臓病のステージが上がるほど(=重くなるほど)カリウム制限は厳しくなり、逆に透析で腎臓の機能を少し補うと制限はやや緩くなる、というわけです。また、服用する薬によっても多少変わってくる場合がありますので、具体的な制限は医師と相談するようにしましょう。
”なんとなく”で控えるのはNG
腎機能が低下している人=カリウムが排出されにくい、というのは確かですが、逆にカリウムを摂ったからといって腎臓の機能がさらに低下するというわけではありません。
そのため、高カリウム血症のリスクが少ないステージ分類ではカリウムを控える必要はなく、むしろ健常者と同程度摂取することが求められます。
カリウム制限の必要がない人がカリウムを控え、さらに下痢などが重なってカリウム排出が増えた場合には、カリウムが極端に少ない状態=低カリウム血症になることも。低カリウム血症の症状としては、脱力感、筋力低下、食欲不振などがあります。
ドライフルーツのカリウム量
では、ドライフルーツにはカリウムがどれくらい含まれているのでしょうか?ここで、生の果物とカリウム量を比較してみましょう。
生の果物とドライフルーツの比較
100gあたりのカリウム量 | 果物(生) | ドライフルーツ |
バナナ | 360mg | 1300mg |
あんず | 200mg | 1300mg |
マンゴー | 170mg | 1100mg |
いちじく | 170mg | 840mg |
ブドウ | 130mg | 740mg |
プルーン | 220mg | 730mg |
ブルーベリー | 70mg | 400mg |
ドライフルーツのほうが、カリウム量が数倍多いことがわかりますね。これはなぜでしょうか?ドライフルーツは水分が抜けている分、栄養素が凝縮している食べ物。透析患者さんがドライフルーツを避けるよう指導されることが多いのは、これが理由です。
実際に食べても良い量は?
では、腎臓機能が低下している人が食べてもよいドライフルーツの量とはどのくらいなのでしょうか?先述したように、腎臓病ステージ1~3aの方や腹膜透析で毎日透析する人は、基本的にカリウムの制限がないので、ドライフルーツの摂取量は健常者と同様、1日30~50g(=100~150kcal)が目安です。
その他のステージの患者さんは、1500~2000mg/日以下というカリウム制限があります。健常者が摂取するカリウムは約2300mg/日。果汁ジュースや生野菜は控えるとして、ドライフルーツで摂取するカリウムは多くても100mg程度に抑えたほうが良いでしょう。
カリウム100mg分のドライフルーツ量は、大まかに計算して以下のようになります。
●ドライバナナ :3~4枚
●アプリコット :1個
●ドライマンゴー:1枚
●ドライいちじく:1個
●レーズン :22粒
●プルーン :1~2個
●ブルーベリー :25粒
比較的カリウム量が少ないブルーベリーなどは、制限があっても取り入れやすいかもしれませんね。
ドライフルーツはカリウム量に注意!
ドライフルーツはビタミンやミネラルも豊富なので、積極的に取り入れたいもの。しかし、腎臓病の患者さんや透析患者さんは、カリウム過剰により命に関わる場合もあるので、食べ過ぎには注意が必要です。
心配な方は近くの病院やかかりつけの医師とも相談しつつ、ストレスのなく栄養も適度に摂取できる間食・食事を考えていくのが良いですね。
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よくある質問
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カリウムの多いドライフルーツは?
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カリウムが多いドライフルーツは、ドライトマト(3200mg)、ドライあんず(1300mg)、ドライバナナ(1300mg)、ドライマンゴー(1100mg)などが挙げられます(食品成分表より)。生のフルーツよりもドライフルーツのほうがカリウム量が数倍多いため、特に腎機能が低下している方は食べる量に注意してください。
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ドライフルーツのカリウムはむくみに効く?
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ドライフルーツに豊富なカリウムは、摂り過ぎた塩分とともに余分な水分を出し、むくみを解消してくれます。特に、ドライトマトやアプリコット、ドライマンゴー、ドライいちじくなどはカリウムが豊富で、むくみ予防にもおすすめです。
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カリウムの多いフルーツは?
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カリウムが多いフルーツには、バナナやキウイ、メロン、などがあります。さらに、生のフルーツよりもカリウム量が数倍多いのがドライフルーツです。むくみや高血圧予防に効果があるとされるカリウムですが、特に腎機能が低下している方は食べる量には注意してください。
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ドライフルーツにはカリウムが多く含まれているのはなぜですか?
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ドライフルーツは、フルーツの水分を飛ばし、栄養を凝縮させた食べ物です。そのため、カリウムを始め、様々な栄養素が数倍多く含まれています。むくみや高血圧予防に効果があるとされるカリウムですが、特に腎機能が低下している方は食べる量には注意してください。
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ドライフルーツは食べすぎに注意すべきですか?
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ドライフルーツは栄養価とともにカロリーも高いので、食べ過ぎには注意が必要です。ドライフルーツだと30-35g程度が一日の摂取量の目安になりますが、腹持ちもするので間食にはぴったりですよ。ドライフルーツには砂糖が使われているものや、砂糖不使用のものなど色々ありますので、無添加の砂糖不使用のドライフルーツを選ぶとなお良いですね。
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カリウムが1番多い食品は?
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カリウムを多く含む食材は、海藻類や豆類、イモ類や野菜などがあります。特にほうれん草やにんじん、バナナ、大豆、昆布、ひじきなどは多いです。カリウムは、高血圧予防に効果がありますが、腎機能が低下している方は食べ方に注意が必要です。
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カリウムの多いフルーツのランキングは?
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カリウムの多いフルーツランキングとしては、バナナ、あんず、マンゴーあたりがトップ3を占めます。これは、生フルーツでもドライフルーツでもあまり変わりません。その他、いちじくやぶどうなどもカリウムを多く含みます。