松の実とは、松の木の実(つまり松ぼっくり)の中にある種の「胚乳」と呼ばれる部分のことを指します。胚乳とは植物の養分を貯めるところであり、栄養素がたっぷりなのです。実はアーモンドやくるみといったナッツ類も、この胚乳の部分を食用としており、松の実もナッツ類に分類されます。
古くから、滋養強壮に効果がある食べ物として知られてきた松の実。今回は、東京上野・アメ横で1956年から続くナッツとドライフルーツの専門店・小島屋の視点から、そんな松の実に含まれる栄養素やおすすめの食べ方、そして気になる効果効能についてたっぷりと解説していきましょう!
「仙人の食べ物」松の実とは?
松の実は、「1日3回食べると長生きできる」とされ、古くから「仙人の食べ物」と言われてきました。実際に、不飽和脂肪酸・食物繊維・ビタミンE・ビタミンB1・カリウム・鉄・マグネシウム・リン・亜鉛・銅など、豊富な栄養素が含まれており、健康への効果は絶大です。具体的な栄養素を紹介する前に、まず松の実について簡単に説明しておきましょう。
そもそも何の実?どこで採れる?
松の実とは、松ぼっくり(松傘)の中に入っている種子の一部分です。松と言えば日本のイメージですが、日本の代表的な松の木(アカマツやクロマツ)からできる松の実は、食用ではありません。実際には、松の仲間は世界中に自生しており、食用とされるのは主に中国や朝鮮半島で採れる五葉松の実です。
世界中の料理でも大活躍!
松の実はアジアだけでなくヨーロッパでも採れ、様々な料理に活用されてきました。代表的なところでは、中国の薬膳です。滋養強壮に効果のある食材として、「海松子」「松子仁」「松子」という名前で薬膳に使用されてきました。
他にも韓国ではキムチに入っていたり、イタリアではサラダに混ぜたりジェノベーゼソースを作るのにも使われます。料理に使いやすく、重宝されてきた食材だと言えるでしょう。
松の実に含まれる栄養成分を解説!
続いては、松の実に含まれる栄養素についてです。ここで、松の実と同様料理にも使われるくるみと比較して、表で確認しましょう。
100gあたり | 松の実 | くるみ |
カロリー(kcal) | 690 | 674 |
タンパク質(g) | 14.6 | 14.6 |
脂質(g) | 72.5 | 68.8 |
一価不飽和脂肪酸(g) | 20.26 | 10.26 |
多価不飽和脂肪酸(g) | 41.48 | 50.28 |
食物繊維(g) | 6.9 | 7.5 |
カリウム(mg) | 620 | 540 |
マグネシウム(mg) | 250 | 150 |
鉄(mg) | 6.2 | 2.6 |
亜鉛(mg) | 6 | 2.6 |
銅(mg) | 1.3 | 1.21 |
ビタミンE(mg) | 12.3 | 1.2 |
葉酸(μg) | 73 | 91 |
ビタミンK(mg) | 27 | 7 |
【参考】松の実 -Slism
くるみ -Slism
松の実には豊富なミネラル・ビタミンが含まれていることがわかりますね。ここからは代表的な栄養素をピックアップして解説していきます。
身体を作る『タンパク質』
タンパク質は、炭水化物や脂質とともにエネルギーを作る3大栄養素の1つです。タンパク質は身体を構成する重要な成分であり、筋肉や内臓・皮膚はもちろん、毛髪やホルモン・酵素までの原料となります。
健康に良い脂質『不飽和脂肪酸』
不飽和脂肪酸は、脂質に含まれる成分の1つです。ナッツ類は脂質が多いことで知られていますが、それでも健康に良いとされるのはその脂質に含まれる脂肪酸の多くが不飽和脂肪酸だからです。不飽和脂肪酸にはオレイン酸やリノール酸、ピノレン酸などがあります。
不飽和脂肪酸の代表『オレイン酸』と『リノール酸』
オレイン酸はオリーブオイルにも含まれる脂肪酸で、コレステロールを下げる働きがあります。コレステロールが下がると高脂血症が改善され、結果的に生活習慣病の予防になります。
リノール酸は体内で作ることができない必須脂肪酸です。コレステロールを下げる効果があるだけでなく、皮膚や髪にうるおいを与える効果があり、不足すると皮膚障害に陥ることもあります。
【参考】植物油と健康-日本植物油協会
五葉松の実に特有の『ピノレン酸』
オレイン酸とリノール酸は他のナッツ類にも多く含まれますが、ピノレン酸は松の実にしか含まれない脂肪酸です。ピノレン酸には、炎症やかゆみを抑制したり肌の細胞を活性化する作用があります。また食欲を抑制するホルモンの分泌を促し、空腹を抑制する効果もあるとされています。
貧血を予防する『鉄分』
鉄分は、生命維持に必要とされるミネラルの1種です。体内にある鉄分の約6~7割は、赤血球に含まれる「ヘモグロビン」というタンパク質を構成しています。ヘモグロビンは、血液中で酸素を運搬する役割を持っているので、鉄分が不足するとヘモグロビンが作られずに貧血となってしまうのです。
美髪&育毛にも効果!『亜鉛』
亜鉛には、毛髪の主成分である「ケラチン」というタンパク質を合成する働きがあります。このため今、育毛の分野でも注目されている成分なのです。髪を強くし、薄毛を改善したり美髪を作る効果があります。
但し、1日50mg以上の亜鉛摂取は過剰摂取となり、嘔吐や倦怠感が現れる可能性があるので注意が必要です。松の実に含まれる亜鉛は100gあたり6.9mgなので、ほとんど心配はいりませんが、ぜひ覚えておいてくださいね。
抗酸化作用たっぷり『ビタミンE』
ビタミンEは、抗酸化作用が強いことで知られており、体中の細胞や成分の酸化を抑制します。その結果、細胞の老化を防いだり血管を丈夫に維持したりする効果があるので、生活習慣病の予防にも効果的です。松の実には、くるみの3倍以上のビタミンEが含まれ、ナッツの中でもトップクラスです。
松の実の気になる効果効能は?
松の実は、多くの栄養素を含んでいることから得られる効果効能も多く、どれも美容や健康にとても嬉しいものばかりです。そんな効能について、代表的なものを紹介しましょう。
女性にも男性にも嬉しい髪への効果!
松の実には、身体を作るタンパク質が多く含まれている上、髪の成分である「ケラチン」というタンパク質を合成する亜鉛も多く含まれています。このため髪に潤いを与えてつやを与え、美しい髪に導いてくれる効能があります。
さらに亜鉛にはまた抜け毛の原因である5αリダクターゼを抑制する働きがあるとされており、薄毛や抜け毛対策にも効果的と言えます。
また松の実は、肌の細胞を活性化する脂肪酸や、強い抗酸化作用をビタミンEを含んでいるため、細胞を若々しく保つ効能もあります。髪だけでなく、美肌にも効果的な食材と言えるでしょう。
ダイエット効果にも!?
松の実に特有なピノレン酸には、食欲抑制ホルモンの分泌を促す作用もありました。そのため、ダイエットサプリメントに使われることもあります。またエネルギー産生を促すビタミンB1やミネラルも多く含まれているため、代謝が上がり脂肪を燃焼しやすい身体にもつながります。まさにダイエットにおすすめの食材です。
健康にも効果絶大!
ピノレン酸には、適量を食べることによってアレルギーや炎症を抑える効能があります。そのためピノレン酸を含む松の実は、現代に増加しているアレルギーやアトピーにも効果が期待できるとされています。
また不飽和脂肪酸を多く含むので、コレステロールを下げ血液をサラサラにする効能もあり、生活習慣病の予防にも効果があります。まさに健康維持にぴったりですね。
※松の実の健康効果については以下の記事もご参考にどうぞ↓↓
≪松の実とは何の実?!知られざる健康&美容への効果を徹底解説!おすすめレシピ&食べ方もご紹介≫
おすすめの松の実の食べ方~注意点やレシピまで~
松の実は、ジェノベーゼを作るときなどによく使われる食材です。しかしそれ以外にどのように使えばよいのか、意外とわからないという人も多いのではないでしょうか。そこで、おすすめの食べ方や、食べる時の注意点について解説しましょう。
おすすめの食べ方
今回おすすめする松の実はこちら!おつまみとしてはもちろん、おいしい料理に使うにもおすすめです。
食べ方①ローストしてそのまま
こちらの松の実は、もちろんそのままでも召し上がっていただけますが、軽く炒めて食べるのがおすすめです。香ばしさが引き立ち、岩塩を振って食べると最高のおつまみになります。
食べ方②料理に使う!レシピ紹介
最近の健康ブームで話題となり、松の実を使ったレシピも増えてきました。ここでいくつかレシピを紹介しましょう。
<香ばし松の実のカボチャサラダ>
こちらは、ローストした松の実をかぼちゃサラダに合えた一品になります。松の実の香りと食感がアクセントになりおすすめです。またかぼちゃに含まれるビタミンCには、松の実に含まれる亜鉛の吸収を良くする効果があり、相性の良い食べ合わせです。
<鱈のムニエル松の実ソース>
松の実を炒め物やソースにするのもおすすめです。こちらはムニエルに、にんにくとバターで炒めた松の実をソースとして活用するものです。にんにくとあわせると風味が際立ってさらにおいしくいただけます。
またにんにくはアリシンという物質を含み、ビタミンB1の吸収を助け血行をよくしたり、殺菌作用も持つので、松の実と合わせることでさらに健康への効果を増強させることができます。
松の実を食べる時の注意点
松の実は、カロリーが高めなので食べすぎには注意です。おやつの目安は1日200kcalといわれますが、カロリーの高い松の実は20g食べるだけで130kcal程にもなってしまいます。また、20gの松の実で、1日分より少し多いビタミンEを摂取することになります。
そのため、1日の摂取量の目安は、10g程度と考えておきましょう。松の実の食べすぎは、逆にコレステロールを増やしてしまうため注意が必要です。また松の実は脂質が多く酸化しやすいので、保存するときは密閉してできるだけ冷蔵庫か暗所に保存しましょう。
松の実を食事に取り入れて美容と健康を手に入れよう!
仙人の食べ物と呼ばれるほど、豊富な栄養を含む松の実。健康や美容への効果効能たっぷりの松の実を、ぜひ生活の中に取り入れてみてくださいね!
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よくある質問
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松の実は何に効きますか?
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松の実は、海松子(カイショウシ)と呼ばれる生薬としても利用され、体内の乾燥を潤す作用があります。また、松の実は健胃・滋養強壮・利尿作用などがあり、薬膳としても利用されています。さらに、松の実にはビタミンEやポリフェノール、食物繊維、オメガ3脂肪酸などが含まれており、抗酸化作用やコレステロールの低減、美髪効果やアトピーにも効果があるとされています。
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松の実の健康法は?
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松の実を食事に取り入れる健康法としては、サラダへのトッピングが一番お手軽でお薦めです。松の実は加熱すると甘味と香りが増しますので、パンや炒め物に使って頂くのも美味しいです。松の実に含まれるピノレン酸はオメガ3系脂肪酸で、アレルギー・炎症・発熱・血栓などを抑制する働きがあります。
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松の実の薬膳効果は?
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東洋医学に基づいた薬膳では、自然界の物質を「木・火・土・金・水」に分類します(五行説)。松の実は「土」の分類であり、植物を育てて溜める、つまりは雨の恵みを得る性質を指します。そのため、松の実は体の乾燥を防ぎ、乾燥から来る空咳や便秘に効能があるとされています。その他松の実は健胃・滋養強壮・利尿作用などがあるとされます。